良いポートフォリオは作品集ではない|採用担当者が見ている5つのこと

📌 この記事のポイント
良いポートフォリオは「採用プレゼン資料」
見られるのは熱意・継続力・伸びしろ・デザイン力・人となり
経験の少なさは弱みではなく、伸びしろという強み
採用担当者もデザイナー。細部まで見られている
人となりは、デザイン力と同じくらい重要
2026年9月23日更新
良いポートフォリオは「一緒に仕事をしたい」と思われる採用プレゼン資料
良いポートフォリオとは、作品のクオリティを見せる作品集ではなく、「この人と一緒に仕事をしたい」と思ってもらうための採用プレゼン資料です。作品の出来に加えて、考え方や人柄まで伝わるかどうかが、選ばれるかどうかを分けます。

2026年9月12日の「NOT DESIGN EXPO」で、グラフィックデザイナー歴27年のツネカドさんは、この考え方を軸にポートフォリオの話をしました。ツネカドさんは、広告代理店の制作部門、広告制作会社、インハウスデザイナーを経て、現在はフリーランス。デザイン系の専門学校など3つの教育機関で、ポートフォリオ指導にも携わっています。この記事では、採用担当者が作品以外に何を見ているのかを、5つの視点で考えます。
作品が良ければ選ばれた時代から、何が変わったか
ポートフォリオで見られるものは、作品の出来から、考える力と人柄へと広がっています。 ツネカドさんは、自身が就職活動をした20代の頃は「作品のクオリティが高ければ採用される時代だった」と振り返っていました。

以前 | 今 |
|---|---|
作品のクオリティが高ければ選ばれた | なぜそのデザインかを説明する力も見られる |
作品の量で実力を示した | 企画や課題の解決方法まで考える力が見られる |
デザインの腕が中心 | 一緒に気持ちよく働けそうかも見られる |
「この人いい人だな」「コミュニケーション力が高そう」「机を並べて気持ちよく働けそう」。こうした、一緒に働く人としての魅力も含めて判断されています。
では、「一緒に仕事をしたい」と思ってもらうには、何を伝えればいいのでしょうか。ツネカドさんは5つの視点を挙げ、「熱意・継続で、デザインが伸びる人」という覚え方も紹介していました。
視点 | 採用担当者が知りたいこと | ポートフォリオで伝える場所 |
|---|---|---|
熱意 | なぜこの会社なのか | プロフィール・志望動機 |
継続力 | 長く働き、困難を乗り越えられるか | プロフィール・経歴 |
伸びしろ | これから成長していけるか | 自主制作の作品ページ |
デザイン力 | 基本が身についているか | ポートフォリオ全体 |
人となり | 一緒に気持ちよく働けるか | 自己紹介・大切にしていること |
見られていること1・2|熱意と継続力
熱意とは、その会社だからこそ働きたい、という自分だけの理由です。ツネカドさんは、例えば次のような伝え方を挙げていました。


「御社が手がけた〇〇化粧品の広告に衝撃を受け、心を動かす広告を作りたいと思いました。この広告との出会いが、デザイナーを目指したきっかけです」
本音を語るのは恥ずかしいかもしれません。それでも、心の中の思いを伝えることで本気度が伝わり、印象に残る応募者になれると話していました。
継続力とは、ひとつのことに粘り強く取り組めることです。「令和の今に、石の上にも三年?」と思うかもしれません。ツネカドさんは、企業にとって1人を採用するには多くの時間とコストがかかるからこそ、今は継続力に価値があると考えています。
3年連続で、デザインの年鑑に自主制作の作品を応募した
小学校から高校まで陸上部を続け、大会に出場した
デザインに直接関係のない経験でも、「何年、どんなことを続けてきた人か」は継続力を伝える材料になります。
見られていること3|伸びしろ(経験が少ないことは弱みではない)
伸びしろとは、これから成長していける可能性のことです。ツネカドさんは、経験が少ないことは弱みではなく、伸びしろがあるという強みだと話していました。

伸びしろを伝える方法として、ツネカドさんが就職活動で最も有効だと考えているのが、応募する会社のメインクライアントの仕事を、1つ自主制作してポートフォリオに入れることです。デザインの意図や思考の過程を丁寧に見せると、採用担当者は「ここまで考えてくれたんだ」と強く印象に残るそうです。
実務経験が少なくても、主体性、考える力、入社への熱意がまとめて伝わります。
見られていること4|デザイン力(ポートフォリオそのものが作品)
デザイン力とは、レイアウト、文字組、写真の扱いといった、デザインの基本が身についていることです。ツネカドさんは、ポートフォリオそのものを1つの作品として作ることをすすめていました。

デザインの4原則(近接・整列・反復・対比)を意識してレイアウトする
文字組と写真のクオリティで、丁寧さを見せる
4原則は、書籍『ノンデザイナーズ・デザインブック』(マイナビ出版)で詳しく学べます。ツネカドさんも、繰り返し読むことをすすめていました。
採用担当者は、細部まで見ている
採用担当者もデザイナーです。作品の中身だけでなく、ページが折れ曲がっていないか、汚れていないか、ファイルのカバーが曇っていないかまで見られています。中身だけでなく、細部への気配りもデザイン力の一部です。
伸びしろを伝える作品の考え方
応募先のクライアントの仕事を自主制作する時は、完成したデザインだけでなく、なぜその案にたどり着いたのかを見せることが大切です。ツネカドさんは、デザインの意図や思考のプロセスを丁寧に見せることで、「ここまで考えてくれたんだ」という印象が残ると話していました。
例えば、応募先が化粧品の広告を多く手がけているなら、その化粧品ブランドの新しい広告案を1つ作り、ターゲット、伝えたいこと、ラフ案、選んだ理由までを見せます。実務経験がなくても、考える力と入社への熱意がまとめて伝わる作品になります。
見られていること5|人となり(講師自身の20代の失敗から)
人となりとは、その人の人柄や、仕事への向き合い方のことです。ツネカドさんは、5つの中でこれがいちばん伝えたい内容だと話していました。

ツネカドさん自身、20代の頃は態度やコミュニケーションがひどく、試用期間で「もう来なくていいよ」と言われ、仕事が終わってしまったことが何度かあったそうです。その経験から、「この人と一緒に仕事がしたい」と思ってもらえる人となりが、とても重要だと感じていると語っていました。
一緒に働きたいと思われる人 | ポートフォリオでの伝え方の例 |
|---|---|
相手の立場に立って行動できる | 「仕事で大切にしていること」に書く |
感謝を自然に伝えられる | 周囲への気配りを大切にしている、と書く |
機嫌よく、穏やかにいられる | チームでの役割や、雰囲気づくりの経験を書く |
話をきちんと聞き、自分の考えを伝えられる | 報告・連絡・相談を徹底している、と書く |
人となりやコミュニケーション力は、デザイン力と同じくらい重要です。プロフィールで人となりを伝えることが、他の応募者との差につながります。
5つの視点のセルフチェック
セルフチェックとは、自分のポートフォリオが5つの視点を伝えられているかを、提出前に確かめる表です。1つでも「いいえ」があれば、その部分から見直してください。
視点 | チェックする問い | はい/いいえ |
|---|---|---|
熱意 | 応募先の会社だからこそ働きたい理由が、自分の言葉で書かれているか | |
継続力 | 何年、どんなことを続けてきたかが、プロフィールに書かれているか | |
伸びしろ | 応募先に関係する自主制作があり、考えた過程が見えるか | |
デザイン力 | レイアウトが4原則にそろい、折れや汚れなど細部まで整っているか | |
人となり | 仕事で大切にしていることが、実際の行動と一緒に書かれているか |
ポートフォリオでよくあるつまずき
よくあるつまずきとは、講演で挙がった、選ばれにくくなるポートフォリオの特徴です。ツネカドさんが紹介した例を、直し方と一緒にまとめました。
つまずき | なぜ伝わりにくいか | 直し方 |
|---|---|---|
「何でもできます」と趣味や特技を並べる | 結局何が得意か分からず、印象に残らない | 1つに絞って、印象を残す |
古い作品から時系列で並べる | 最初の古い作品だけで判断されてしまう | 自己紹介のあとに、いちばんの自信作を置く |
作品の画像だけを並べる | なぜそのデザインか、考える力が伝わらない | コンセプト、誰に向けたか、制作過程を添える |
プロフィールが1ページだけ | 人となりや継続力が伝わらない | 4ページ以上で、経歴・続けてきたこと・大切にしていることを書く |
写真が暗い、ピントが合っていない | 細部への気配りが足りない印象になる | カメラマンに頼むか、どうしても微妙なら白黒にする |
どれも、作品のクオリティとは別のところで評価が下がってしまう例です。作品を作り込む前に、まずこの表の項目を確認してみてください。
5つの視点は、1冊の中で分担して伝える
5つの視点を、すべてのページで伝えようとする必要はありません。熱意と人となりはプロフィールで、伸びしろは自主制作の作品で、デザイン力はポートフォリオ全体で、というように、ページごとに役割を分けて伝えると、1冊の中で自然に5つがそろいます。
校長の見解|「なぜそのデザインか」を説明できることを大事にしたい
もちがイベント冒頭で話したNOTの方針は、なぜその形や書体、配置を選んだかを説明できるデザイナーを育てることでした。ツネカドさんの話を聞いて、ポートフォリオにも同じことが言えると感じています。

NOTでも、作品の出来だけでなく「なぜそのデザインか」を説明できることを大事にしている。 ポートフォリオは、その説明を採用担当者に届ける場所だと思っています
人となりは、作ったように書くより、実際にしていることを具体的に書くほうが伝わる。 「気配りができます」より、「新しく入った人に最初の1週間の手順書を作った」のほうが、人柄が見えると感じています
自信作を先頭に置くのは、見る人の時間を大事にすることでもある。 忙しい採用担当者への気配りも、人となりの一部だと、もちは思っています
限界と注意点
会社の規模や職種で、見られるポイントは変わります。 応募先の実績や求人の内容を確認し、何が求められているかを考えてください
実在の会社の仕事を自主制作する時は、自主制作であることを明記しましょう。 実際の仕事と誤解されないようにします
継続力のアピールは、無理を続けることではありません。 ツネカドさんも、いじめやハラスメントがあるような環境からは「逃げるが勝ち」だと話していました
5つの視点は、グラフィックデザイナーの採用を中心にした考え方です。 Webデザイナーのポートフォリオで意識したいことは、ポートフォリオシリーズのWeb編で紹介しています
ポートフォリオの考え方についてよくある質問
作品が少なくても、ポートフォリオを作っていいですか?
作れます。経験が少ないことは伸びしろという強みです。応募先のクライアントの仕事を自主制作するなど、考える過程を丁寧に見せる作品を加えると、作品の少なさを補えます。
自己PRに、デザインと関係ない経験を書いてもいいですか?
書いて大丈夫です。部活や趣味を長く続けた経験は、継続力を伝える材料になります。ただし、いろいろ書きすぎず、印象に残る1つに絞るのがおすすめです。
人となりは、どうやって伝えればいいですか?
自己紹介ページに「仕事で大切にしていること」という項目を作り、実際にしている行動を書くのがおすすめです。
採用担当者は、ポートフォリオを何分くらい見ていますか?
時間は会社によって違いますが、ツネカドさんは、見る時間が限られているので最初の数ページが勝負だと話していました。自信作を先頭に置いてください。
ポートフォリオと履歴書で、同じことを書いてもいいですか?
内容が重なっても問題ありません。ただ、ポートフォリオでは文章だけでなく、写真やレイアウトで人となりを伝えられます。履歴書より一歩踏み込んで、大切にしていることや続けてきたことを具体的に書いてください。
人となりを書くのが恥ずかしいです。
ツネカドさんも、本音を語るのは恥ずかしいかもしれないと話していました。まずは「実際にしていること」を事実として書くところから始めると、自然に人柄が伝わります。
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