NOT DESIGN SCHOOL(ノットデザインスクール)

動きを説明できるデザイナーは何が違う?|語彙は毎日の逆算で育つ

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2026/09/18

📌 この記事のポイント

  • 説明できる人は、動きを「印象」の言葉で語る

  • 「速い」は動きの性質、「元気」は受け手の印象

  • 印象を飛ばすと、クライアントに理由を話せない

  • 語彙は受賞サイトを毎日5分、逆算して育てる

  • 静止画でしている説明を、動きにも広げるだけ

2026年9月23日更新

動きを説明できる人は、動きを「印象」の言葉で語っている

動きを説明できるデザイナーとできないデザイナーの違いは、動きを「どう動くか」だけでなく「どう感じさせるか」の言葉で語れるかにあります。「速く大きくなる」で止まらず、「だから元気で前向きな印象になる」まで言えると、動きに理由が生まれます。

「自分のつくる動きに、根拠を持てるようになること」のスライド

2026年9月12日の「NOT DESIGN EXPO」で、モーション講師のカギーさんは講座のゴールを「映像を作れるようになることではなく、自分の動きに根拠を持てるようになること」と話していました。この記事では、その考え方と、根拠を支える語彙を育てる習慣を紹介します。

「動かせる」と「説明できる」は別のスキル

動きの言語化とは、自分が作った動きの意図を、見た人の感じ方と結びつけて説明することです。操作ができることと、説明できることは別のスキルです。

「この動きを説明してみましょう」のスライド
コンセプト→印象・感情→動きの性質→パラメータ

講演では、「Hello」という文字が奥から現れる動きを見せ、参加者に2つの問いを投げていました。

問い

参加者の答え

言葉の種類

この動きを説明してください

勢いがある、速い、突然現れる、大きくなる

動きの性質

この動きはどんな印象を与えますか?

元気、ワクワク、驚き、目が止まる

受け手の印象・感情

同じ動きを見ても、1つ目の問いには「動き」の言葉、2つ目には「感情」の言葉が集まります。この2種類を分けて持っていることが、説明できるデザイナーの土台です。

カギーさん自身は、コンセプトから印象・感情、動きの性質、パラメーターの順に考えていると話していました。考え方の詳細は、NOTの動きのアイデアの出し方もあわせて参考にしてください。

動きの意図を説明できると、仕事で変わること

動きの意図を説明できると、クライアントやチームとのやり取りの質が変わります。 カギーさんが講演で挙げていたメリットを整理すると、次のとおりです。

「これができるようになると…」のスライド

相手・場面

説明できると変わること

クライアント

なぜこの動きにしたのかを、納得してもらいやすい

Webサイト全体

世界観を、動きまで一貫させられる

エンジニア・他のデザイナー

意図を共有しやすく、協議が進む

実装の判断

どこまで動かすべきかを決めやすい

参考作品を見る時

なぜ良いのかを分析し、再現しやすい

逆に、コンセプトからいきなり動きに進むと、「なぜその動きなんですか?」と聞かれた時に答えにくくなります。カギーさんは、印象・感情の段階を飛ばしてしまう人は多いと指摘していました。

印象を飛ばすと、何が起きるのか

印象を飛ばした説明は、例えば次のようになります。「フレッシュな若々しさがコンセプトなので、文字を奥から手前に飛び出させました」。一見つながっていますが、なぜ飛び出すとフレッシュなのかが抜けています。

印象を入れると、こう変わります。「フレッシュな若々しさを、見た人にインパクトと前向きな驚きとして感じてほしいので、文字を奥から手前に一気に飛び出させ、少し行きすぎて戻る動きにしました」。見た人の感じ方が入るだけで、クライアントは自分の立場で動きを評価できるようになります。 カギーさんも、コンセプトから印象、動きの性質、パラメーターまでつながっていれば、クライアントにはおおむね納得してもらえると話していました。

語彙は「逆算」で育つ|受賞サイトを毎日5分分析する

動きを説明する語彙は、優れた動きを見て、その理由を逆にたどる練習で育ちます。質疑応答で「語彙力はどうつけたのか」と聞かれたカギーさんは、新卒1年目から続けている習慣を紹介していました。

使っているのは、海外のWebデザインアワード「Awwwards」です。Awwwardsでは、毎日1サイトが「Site of the Day」に選ばれます。審査はデザイン40%、ユーザビリティ30%、創造性20%、コンテンツ10%の配分で行われ、動きまで丁寧に設計されたサイトが多く並びます(Awwwards評価基準の解説)。

カギーさんは、このSite of the Dayを見て約5分で分析する習慣を、およそ5年続けているそうです。

逆算の3つの問い

逆算とは、完成した動きから、その裏にあるパラメーターやコンセプトを推測することです。講演で紹介された考え方を、3つの問いに整理しました。

Helloの動きを4段階に分けた表

問い

考えること

書き方の例

なぜこの動きなのか

どんな印象を与えたいのか

「ゆっくり現れるので、落ち着いた高級感を出したいのでは」

自分ならどう作るか

どのパラメーターをどう変えるか

「不透明度を0→100%、1秒、イーズアウト」

コンセプトは何か

サイト全体で伝えたいこと

「上質な時間を過ごしてほしい、というブランド」

普段、コンセプトから動きを作る時は上から下へ考えます。逆算では、動きからコンセプトへ、下から上へたどります。この往復を繰り返すうちに、「この印象ならこの動き」という引き出しが増えていきます。

逆算した例|ゆっくり現れるメインビジュアル

例えば、あるブランドサイトで、メインの写真が数秒かけてゆっくり浮かび上がる動きを見つけたとします。3つの問いで逆算すると、次のようになります。

  • なぜこの動きなのか:急がせず、落ち着いた時間を感じてほしいから

  • 自分ならどう作るか:不透明度を0から100%へ、2秒ほどかけて、イーズアウトで変化させる

  • コンセプトは何か:日常から少し離れた、上質でゆったりした時間を届けたい

大切なのは、答えが合っているかどうかより、動きと印象とコンセプトを、自分の言葉でつなげてみることです。これを繰り返すうちに、自分で動きを作る時にも、同じ順番で考えられるようになります。

静止画でしている説明を、動きにも広げる

動きの言語化は、新しいスキルというより、静止画のデザインで普段していることの延長です。

「元気な印象にしたいから、この配色と書体にした」。デザイナーはこうした説明を日常的にしています。カギーさんも、コンセプトから印象・感情を考えるところは、デザインとまったく同じだと話していました。

違いは、印象を現実の動きに置き換える段階が加わることだけです。元気なら「勢いよく飛び出す」、親しみなら「柔らかく集まる」。この置き換えの語彙が、逆算の習慣で増えていきます。

印象と動きの対応表|講演の例から

印象と動きの対応とは、「こう感じてほしい」を「こう動かす」に置き換える組み合わせのことです。講演で登場した例を、対応表にまとめました。語彙を増やす最初の手がかりとして使ってください。

目指す印象

動きの性質

パラメーターの例

講演での題材

元気、前向き、驚き

奥から手前へ一気に飛び出す。少し行きすぎて戻る

スケール0→100%、イーズアウト+オーバーシュート

「Hello」の文字

温かさ、親しみ、一体感

離れた要素が引き寄せられ、柔らかく集まる

位置の移動、イーズアウト、開始を少しずつずらす

「人と人とのつながり」の丸

変化、挑戦

過去の状態を塗り替える。右へ進む

背景色を左から右へワイプ、矢印を右へ移動

「未来への挑戦」のボタン

同じ「集まる」でも、速く一斉に集まれば勢いが、ゆっくり時間差で集まれば親しみが出ます。動きの種類だけでなく、速さとタイミングまで含めて印象が決まることを覚えておくと、対応表を自分で増やしやすくなります。

言語化の練習を始める1週間メニュー

1週間メニューとは、毎日5分の逆算を、無理なく習慣にするための練習の順番です。カギーさんの習慣をもとに、初めての方向けに段階を分けました。

日

やること

目安の時間

1日目

Site of the Dayを1つ見て、動いた場所を3つ書き出す

5分

2日目

動いた場所ごとに「速い/ゆっくり」「どこからどこへ」を書く

5分

3日目

その動きが与える印象を、1つずつ言葉にする

5分

4日目

自分ならどのパラメーターで作るかを書く

5分

5日目

サイト全体のコンセプトを予想して書く

5分

6日目

1つの動きを、FigmaかAfter Effectsで再現してみる

15〜30分

7日目

1週間分のメモを見返し、よく使った言葉を10個選ぶ

10分

7日目に選んだ10個の言葉が、自分の語彙の土台になります。2週目からは、1〜5日目の内容を毎日まとめて5分で行うのが目標です。

書き出すときの型

サイト名:
動いた場所:
動き(どこから・どこへ・速さ):
印象:
自分ならこう作る:
予想したコンセプト:

限界と注意点

  • 受賞サイトは規模の大きい案件が多いです。 予算や体制が大きいサイトの表現を、そのまま実務に持ち込めるとは限りません。案件の規模に合わせて取り入れてください

  • 他サイトの動きをそのまま使うのは避けましょう。 再現は練習の範囲にとどめ、実務では自分のコンセプトから動きを考えます

  • 逆算には答え合わせがありません。 分析した意図は、あくまで仮説として扱ってください

  • 印象の感じ方には幅があります。 「集まる動き=親しみ」は講演のお題に合わせた解釈で、どんな場面にも当てはまる正解ではありません

動きの言語化についてよくある質問

語彙力がなくても、動きを説明できるようになりますか?

なれます。カギーさんも、毎日の分析を続けることで言語化できるようになったと話していました。最初は「速い」「ゆっくり」でも十分で、そこに「だから○○な印象」を足す練習から始めてください。

Awwwardsは無料で見られますか?

受賞サイトの閲覧は無料でできます。2026年9月時点では、有料の会員向けに講座などのサービスもあります。

1日5分で本当に身につきますか?

カギーさんは約5年続けていると話していました。短時間でも毎日続けることが大切で、1回で身につくものではありません。

分析した内容は、どこに記録すればいいですか?

ノートやFigmaなど、見返しやすい場所なら何でも構いません。「なぜ」「自分なら」「コンセプト」の3つの欄を作っておくと続けやすくなります。

Awwwards以外に、参考になるサイトはありますか?

国内外のWebデザインのギャラリーサイトや、好きなブランドの公式サイトでも同じ練習ができます。大切なのはサイトの種類より、毎日1つを言葉にする習慣です。

分析した内容は、ポートフォリオに載せられますか?

分析のメモそのものより、分析をもとに自分で作った動きの作品を載せるのがおすすめです。「なぜこの動きにしたか」を説明する時に、分析で身につけた言葉が役立ちます。

動きを説明する時、専門用語は使ったほうがいいですか?

相手によって使い分けてください。エンジニアや他のデザイナーには「イーズアウト」「オーバーシュート」などの用語が伝わりやすく、クライアントには「止まる直前にゆっくりになる」「少し行きすぎて戻る」のように、見た目の言葉で伝えるほうが分かりやすくなります。

チームで動きの言葉をそろえるには、どうすればいいですか?

この記事の対応表のように、「印象」と「動き」の組み合わせをチームで1枚にまとめておくのがおすすめです。案件ごとに追加していくと、チームの共通の辞書になります。

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