【対談・全文書き起こし】デザイナーじゃなくてオペレーターになってませんか?20年デザイナー・後藤氏が語る3つの判断軸|NOT MAGAZINE TALK #1

2026/05/13
NOT DESIGN SCHOOLが運営するデザインメディア「NOT MAGAZINE」のポッドキャスト版、NOT MAGAZINE TALK が始動しました。
第1回ゲストは、NOT DESIGN SCHOOLのグラフィックメンターも務めるブランドデザイナー後藤氏(業界歴20年)。テーマは、note記事「そのデザインは期待を超えているか。デザイナーとして20年私が守り続けている3つの判断軸」の深掘りです。
「デザイナーじゃなくてオペレーターになっていませんか?」というドキッとする問いから始まり、3つの判断軸(期待を超える / 1番近い他人でいる / ブランドを背負う覚悟)の中身まで、駆け出しから中堅・シニアまで全員に刺さる内容になりました。本記事は、後藤さんのnote記事をもとに、対談した動画3本(合計約90分)を全文書き起こしして、読み物として再構成したアーカイブ版です。
聞き手は、NOT DESIGN SCHOOL校長のもち。後藤氏の発言を引き出しながら、自分自身も経営者として共感したり迷ったりするリアルな反応がそのまま記録されています。
動画版で見る・聴く:
NOT MAGAZINE TALK #1-1|デザイナーじゃなくてオペレーターになってませんか?
NOT MAGAZINE TALK #1-2|「伴走します」というデザイナーほど上手くいかない理由とは?
NOT MAGAZINE TALK #1-3|「自分をデザインする」という武器の作り方
ゲスト紹介|後藤さんはどんなデザイナーか
もち:今日のNOT MAGAZINE TALK 第1回のゲストは、後藤さんです。後藤さんは、NOT DESIGN SCHOOLのグラフィックメンターとしても大活躍していただいてます。今回書いていただいたnote記事のタイトルが「そのデザインは期待を超えているか。デザイナーとして20年私が守り続けている3つの判断軸」というですね、結構刺さるタイトルですよね。私も読ませていただいたんですけど、終始「そうだよね」と頷きっぱなしでした。
後藤:ありがとうございます。
もち:ただ、ジュニアの皆さんが見てもなかなか「これじゃあどうしたらいいんだろう」みたいなところでつまづくところも多いのかなと。その辺を掘り下げていければと思っています。
もち:では早速、後藤さんの方からテーマの概要を説明してもらってもいいですか?
後藤:はい。私の場合、ブランドのデザイナーをさせていただいていることもありまして、日々経営層とか、事業の意思決定層、わりとハイレイヤーな方々と一緒に仕事をすることが多いんですね。そこで「ここは大事にしておかなきゃいけない」というポイントや、「ここを気をつけないと自分の成長が止まってしまう」というところがいくつかあって、それをまとめたのがこの記事です。タイトルにもある通り、そのための軸、スタンスみたいなことを、大体3つに分けてまとめてみたという形ですね。
もち:上流工程から関わりたいって思っているデザイナーさんにとっては、すごくためになると思います。これ第1章、2章、3章って分かれてるんですが、どういう風に分けたんですか?
後藤:第1章は「期待値を超える」という話で、駆け出しの頃に特に陥りがちなオペレーション的・作業員的なデザイナーから乗り越えていくためのスタンスを語っています。
第2章は、デザイナーとして仕事をしていくうちにクライアントに同一化してしまうという、もう1個陥りがちな罠について。本当は指摘しなきゃいけないのにスルーしてしまったり、自分のパフォーマンスを発揮できなくなったり。「1番近い他人でいる」ことの大切さを語ったのが第2章です。
第3章はブランディング寄りの話で、ブランドを背負う覚悟。ブランドは資産なので、その資産を預かっている自分にはどういう責任があるのかというテーマです。
なぜ「3つの判断軸」を書いたのか?オペレーター化の罠

もち:第1章のテーマは「オペレーターになっちゃってませんか?」というお話ですよね。誰もなりたくはないんですけど、自分はオペレーターじゃないと思っていても、いつの間にかなっているということが結構あるのかなと。後藤さん自身もかつてはオペレーターになっていたなみたいな経験ってありますか?
後藤:あります。自分が最初にお世話になった制作会社で、「企画から考えるデザイナー」と「作業をするオペレーター的なデザイナー」がはっきり分かれている会社だったんですね。私はその中で「企画を考えるデザイナー」として入ったんです。
なので、「企画を考えるデザイナーにはこういうことも求められる」というのを結構教えてもらうことが多くて、最初から「作業に消化してはいけない」という気持ちはあったんですよ。
もち:おお、最初から意識的だったんですね。
後藤:ただ、企画を考えるとは言っても、お客様から言われたことを企画に直すだけ、みたいなことを結構やってしまっていた。
もち:なるほど。
後藤:それは結局オペレーションなんですよね。なんで「この人たちがこんなことを言っているんだろう」という、背景にある意思みたいなところを見出すまでには、かなり時間を要しました。多分4〜5年かかったんじゃないかな。
もち:4〜5年。それは何かきっかけがあって気づいたんですか?
後藤:自分のやっている仕事って、企画を考えてアイデアを出して形にしていくということじゃないですか。それにおいて、採用率が違うわけですよ、企画できている先輩方と自分とでは。
もち:ああ。
後藤:「なんで採用率が違うのかな」と考えると、結局ワンアイデアないんですよね。要は踏み込み方が違う。ちゃんと売れている先輩方は、相手の言葉に対して一歩踏み込んだり、相手はこういう性格だからこういうことをやってあげた方がいいよね、と組み込んだり。相手の人隣り(ひととなり)みたいなところまで考えて組み込んでいた。
もち:そこまで考えなきゃいけないんだ、というのに気づくのに4〜5年かかった、と。
後藤:そうですね。
もち:その4〜5年の間はオペレーター的な仕事の仕方をしちゃってたなと、今は思うんですか?
後藤:振り返ればそうですね。当時は企画を考えてアイデアも全く通らないわけでもなかったので、ほどほどの手応えはあったんですけど、そこから一歩成長しようと考えた時に、そういうことに気づいたって感じです。
【判断軸1】期待を超える|「丸いロゴ」の真逆を提案した話

もち:もう1歩踏み込まないと次のステップに進めないんだなとなった時に、次の章の「丸いもの裏側に潜む真の願いを掘り起こす」というのがあると思うんですけど。簡単に言うと、クライアントが「丸丸にしたい」と言ったからといって、本当に丸丸にしたいと思っているかどうかはわからないよね、という話だと思うんですけれども。これって難しいじゃないですか。相手が本当に何を望んでいるのかを探るのって。後藤さんの経験的に、「これは当てたな」「初めて手応えを感じた」みたいなエピソードってありますか?
後藤:ありますね。あるロゴの提案をした時に、先方が言っていることとは結構真逆なものを持っていったんです。
もち:おお。
後藤:その時に僕がやったことは、ロジックを使うことでした。先方は「業界らしいフォルム」みたいなものを求めていたんですね。優しい感じとか、丸い感じとか。その業界全体としてそういう傾向のあるロゴだったんです。
もち:はい。
後藤:ロゴを見て「あ、何々らしいね」と思ってもらうのはすごく大事なことなので、それは1個の答えではあるんですけど、一方で市場全体を見渡してみるとそういうロゴばっかりじゃんと。
もち:はい、はい。
後藤:後発のサービスがその中で「いかにも昔からありましたよ」みたいな顔をすることって、アピールとして難しいよね、と。後発ブランドだからこそできる表現みたいなこともあるんじゃないか。そういうことをロジックで作っていったんですね。
お客様が考えていらっしゃることよりも、もっと多くのことを考えて、ロジックで解くっていうのは、結構有効な手段の1つかなと思っていて。
もち:なるほど。
後藤:なんでかと言うと、お客さんの頭の中に浮かんでいるものと違うものが出てくるわけだから、絶対「なんでこうなったの?」となるんですよ。
もち:「頼んでたものと違うぞ」と。
後藤:「あれ、違うぞ」と。でも「いやいや、そうじゃないんですよ。ちゃんとこういうロジックでこういうものを持ってきましたよ」と。もちろん丸っぽいやつも持っていくんですけど、「一推しはこれです。なぜならこういう理由で」というのを全て整理された状態で持っていくことが非常に重要だと思っていて。
ロジックの組み立てが「あ、なるほどね」と思ってもらえたら、すごく強力に刺さるっていうことが起こるんですよ。「すごく納得しました」「やっぱりこういう考え方もあるんですね」「さすがですね」みたいなことになる。
僕は提案のゴールって、そういう言葉が出ることだと思うんです。
もち:なるほど。なんか期待を超えていくって、そういうことなんですね。
後藤:そう。なんか僕らってみんなそうだと思うんですけど、「さすがですね」って言われたい。クリエイターって、自分のクリエイティブで「なるほどね」とか「すごいですね」と言われたくて多分仕事してる気がするので。なんかその武器として、やっぱりロジックであったり、「ここまで考えてきました」とか、「もう1歩も2歩も領域を侵犯して考えてきました」みたいなことが、すごく大事なのかなと思います。
もち:これは、想像を超えた案と相手が望んでいる案、どっちも持っていくと思うんですけど、望まれていた方が選ばれちゃうみたいなこともありますか?
後藤:それはもちろんあります。ただ、大体の場合起こるのは、「この案のアイデアこういうとこで良かったので、こっちに取り入れてみませんか」みたいな案の融合みたいなことが大半かなと思っていて。
もち:はい。
後藤:だから自分たちが考えていったことって、必ずしも無駄になるわけではなくて、「この中のこのエッセンスをこういう風に整理したい」みたいな新しい意思が出てくるんですよね。それを生み出したということだけでも、1個大きいクリエイティブのあり方だと思っているので。
もち:確かに。その考え方はなかったんで、今ちょっと目から鱗でした。優しい雰囲気のロゴでお願いしますって言われたけど、後発だからちょっと革新も入れたらいいんじゃないかという意表をついたアイデアを持っていって、例え丸っこい方が選ばれたとしても、「いや、でも確かにうちって革新は他に負けてないよね」みたいな感じで、エッセンスは取り入れたいですみたいになりそうだなと、確かに今思いました。
後藤:そうですね。なので、色だけでもちょっと取り入れてみようかなとか、形の一部だけでもいいからちょっとこうしてみようかとか、それが生まれるだけでも1つ新しいクリエイティブのあり方としてあるのかなと。非常に価値のあることだと思います。
もち:いやあ、確かに。採用されなくても何かしら影響を与えてるから、悲しまなくていい。
後藤:それはもちろん、全然大丈夫です。
もち:(笑)。デザイナー仲間と話していると「気合い入れて『これが1番いい』って自分が思っていた案とは違う案が選ばれがち説」みたいな、「あれ悲しいよね」って話をしてたんですけど。
後藤:絵だけ見せると本当にハレーション起きるというか、結局「なんで?」という答えがない状態なんですよね。「なんで」は結構丁寧に説明してあげないと、そこはいけないのかなと思いますね。
「先に答えをキャッチしちゃう」クリエイターの罠|判断軸1の深掘り
もち:駆け出しの皆さんからすると、こういうあえて逆提案というか、共通アイデアを提案するのって結構勇気がいるかなと思うんですけど。そういうロジックを鍛えるとかコツみたいなのって、何かありますか?
後藤:大抵のクリエイターが陥るのが、答えを先にキャッチしちゃうことをやるんですよね、クリエイターって。普通はロジック的に考えていった結果こういうクリエイティブができました、と持っていくものなんですけど、クリエイターはどちらかというと最初にもう「あ、こういう形なんじゃないですか」みたいなのができてるんですよ。ロジック抜きで。
もち:はい、はい、確かに。
後藤:それをバンと出しちゃうから、「あ、なんかちょっと思ってたこと違うな」みたいになっちゃう。よくある光景なんですけど、どちらかというと最初にキャッチしたものに対してブレイクダウンしていく。「なんで自分はこう思ったのかな」というところからスタートして、「それはこういうロジックとして整理してあげると他の人にも伝わりやすいんじゃないか」と変えていった方がいい。
もち:ああ、なるほど。
後藤:クリエイターの人たちって、要は工程を省きがちなんですよね。できちゃうから。
もち:なるほど。感覚派みたいな。
後藤:そうそうそう。クリエイティブってそういうところがあるので、先読みというか、先にキャッチしちゃう、未来をキャッチしちゃうみたいなことが多くて。だから鋭いんだけど、鋭いだけになっちゃうみたいなことが結構多いですよね。
もち:ちょっと耳が痛いです(笑)。私もポーンって完成系のイメージだけ浮かんじゃって、ロジック後付け無理やりみたいなことが多くて、そこの深掘りが甘いことありますね。
後藤:丁寧にブレイクダウンしてあげることがすごく大事なのと、考えをちゃんと整理していくことが非常に大事で。例えば「あ、こういう感じだよね」とキャッチしたら、それに対して「なんでそう思ったのか」をまず文章で整理してあげる。それを既存のフレームワークに入れ込んでみる。
もち:フレームワーク。
後藤:5W1H とか、4P とか、3C とか何でもいいんですけど、フレームワークって人が理解するためのものなので、既存のフレームワークで「これ使えそうじゃん」というやつを持ってきて、そこに自分のロジックの整理した言葉を当てはめてみる。そうすると整理力ってすごくくっついてくるかなと。
もち:なるほどなるほど。
後藤:本やキーワードで調べて、自分の考えの整理に向いてるフレームワークをいくつか持っておくと1番いいなと思ってます。フレームワークって結局、言葉に変えるものなので、相手の言葉に変わってるはずなんですよ、その時点で。
もち:ああ、なるほど。
後藤:相手が理解しやすい思考の型にはめていく作業なので、それをうまく自分なりにやっていくといいなと思いますね。僕の場合は3CとSTPっていうのがあるんですけど、その2種類を基本使ってます。思考の整理としては、それで大体全部説明できるし。
もち:欲しい。私も「私のフレームワークはこれです」みたいなやつ。
後藤:それがあると、自分の中でも「あ、じゃあこれで整理してみようかな」みたいなのがいくつかあると、綺麗に整理できたらそれを軸としてお伝えすればいいだけなんで。
もち:なるほど。ジュニアだったとしても、フレームワークで説明されると「あ、なんかこの人めっちゃ考えてるんだな」と伝わりますよね。
後藤:本当に簡単なやつでもいいんですよ。5W1H みたいなことでも構わない。フレームワークって考えを制限することで考えやすくするための仕組みなので、うまく使ってあげると全然いいと思いますよ。
大学パンフ1400冊を全部見た「マニア心」|判断軸1の深掘り
もち:後藤さんにくっついていろんな仕事を見させてもらってる時に、1番自分との違いを感じたのも、もしかしたらそこかもしれません。フレームワークとかロジックで説明して、あと事例もめちゃめちゃ説明するじゃないですか。「こういうことがこの会社ではありましたよ」とか「こういう事例もありますよ」みたいな、知識量の差みたいなのをすごい感じて。私、反省して、日経クロストレンドを契約しましたね、最近(笑)。
後藤:あれはいいメディアだと思います、僕は。
もち:私も勉強しようと思って、ちょっと高い、月に1000円ぐらいするんですけど、全然価値ありますね。事例の引き出し集めるぞって。
後藤:その意味で言うと、マニア心というか、なんか例えば、昔大学案内とか学校の広報とか、教育系のやつをやっていたんですけど、僕はネット上で電子パンフレットが見れるんですよ、大学案内とか。それが1400個分ぐらいあるんですけど、大体僕は全部見てたんですよ。
もち:全部?(笑)すご。
後藤:毎朝30分その時間に使って、表紙のスクショを取ってまとめたりして。「あ、今年はなんか女の子1人で映ってるやつが多いな」とか、「色合いはこういう系がやっぱ多いよね」みたいなことを全部分析したやつを作っていて。
もち:なるほど。
後藤:そこまでやる人いないからこそ、なんかそこまでやったらもう勝ちじゃんと思ってやったんですね。
もち:いや、分かる気がします。
後藤:そこまでやるってすごい大変なことのように聞こえるかもしれないけど、修行して30分ぐらいそれをカチカチやってるだけなので、別になんかすごい大変なわけではないんですよ。でも、そこで出てきたアウトプットっていろんなお客さんで使えるんですよね。
「最近この九州のこの大学さんでやってるこういうデジタルパンフレットがあって、ここではすごく写真集みたいな流れで学生の生活を見せてるとこはすごく綺麗でいいんですよね」みたいな話を会話の中で出すだけで、「この人すごいプロだな」みたいに思ってもらえる。
もち:確かに、「めっちゃ知ってるやんこの人」ってなりますね。
後藤:それがすごく大事だなと思っていて。プロとしてちょっと頭1つ抜けたところまでやっていくっていうことは、結構大事なポイントの1つかなと思います。
もち:これは、1個ずつスクショして分析まとめるんですか?
後藤:まとめてました。「今年のベスト大学案内はこれだ」みたいなのを作ったりとか。
もち:自分で楽しむ用ってこと?
後藤:先方にも見せてましたよ。「自分なりのベスト大学案内はこれでした」みたいな資料として、ちょっと1つ雑談ネタとして。
もち:すごい、それは面白い。
後藤:例えば、ある仕事でニッチな業界だったんですけど、その業界の有料記事を契約しちゃって、打ち合わせ前に「本日のニュース」って言って、打ち合わせまでの1週間の間に出てきたニュースで特筆するやつをまとめたりとか。「今週こんなんありましたよ」みたいな話からスタートしたりとか。
もち:すごいな、コミュニケーションがうまいですよね。ここまでやるんだ、みたいな。
後藤:「狂気を見せる」みたいな。狂ってる方の狂気です(笑)。
もち:(笑)。
後藤:考えなきゃいけないのは、クライアントは専門家なんですよね、その分野における。それを向こうの人たちに「すごいですね」と言わせるためにはどういう準備しなきゃいけないのかなっていうのを、逆算で考えてるんですよ、僕の場合。
もち:なるほど。
後藤:「専門分野知識で勝てないから、じゃあ最新の知識は一旦僕が全て勝つぞ」みたいな感じだったり。勝ち負けではないんですけど、そういう発想ですよね。「言わせに行く」っていうことなんです。
もち:言わせに行くんだ。
後藤:待ってるだけだとなかなかそういう言葉出ないんで。
もち:みんな待ってると思います(笑)。
後藤:引き出しに行くために考えた方が角度はあるなって思ったんで。毎回の打ち合わせで「今回の反省点」を洗い出して、次回これで巻き返すぞって時もあるし。次の戦略・作戦を立てるみたいなことはよくやりますね。
【判断軸2】1番近い他人でいる|寄り添うけど同一化しない
もち:第2章のテーマが「1番近い他人でいる、同一化しないという誠実さ」。1番最初の「寄り添うという言葉の甘い罠」、めっちゃあると思いながら見ておりました。クライアントに寄り添いすぎてしまうみたいな、駆け出しジュニアだと特に自分にあんまり自信がなくて、寄り添うあまり全てを受け入れてしまう。プロとして正解に導くんだではなく、クライアントの思い通りに全てを進めようみたいな。こちら、何かそうならないためのアドバイスとかありますか?
後藤:自分がすごく意識してるのは、クライアントがいて、そこに対して自分が今どの立ち位置にいるのかなっていうのをすごく距離感を意識して接触するようにしていて。
もち:距離感。
後藤:時には接近してあげて、同じ目線で見てあげて「あ、そうですよね、なるほど、こういう風に思ってるんですね」って理解することも大事だし。そこからグッと引いて、もう他人家のように見て、「いや、でもそれ普通に考えたらなんかダサいっすよね」って思うことも必要だし。もうちょっとニュートラルな立ち位置に立って、社内政治みたいなことを考えてあげることもあるし。
いろんな立場から、自分が今どの立場でどの発言するのかなみたいなことを考えるってのは、結構癖付けた方がいいなって思っていて。
もち:なるほど。
後藤:僕もジュニアの頃というか、経験が浅かった頃は、「同一化することが大事なんだ」って思ってた時もあって。クライアントと同じ目線で見て、同じ思いを共有してやっていくんだみたいな。
もち:はい。
後藤:別にそれはそれで間違いでもないと思うんですが、結局それって「なんで自分が入る必要があるんだっけ」みたいなところがちょっとずれてくる気がして。本当に届けなきゃいけないのって、自分のクライアントの先にいるお客さんだったり、社内上申していくということであれば上司の人だったりするわけですよね。
そうすると、結局同じ視点になってしまった瞬間に、その人たちのことが遠くなっちゃうじゃないですか。デザインって役割を果たせないってことにもなりかねないので、ちょっと一歩引いてあげて、上司の立場に立って考えてみるとか、エンドのお客さんの立場に至って考えてみるとか、政権一般的にはというところで考えてみるとか、そういう視点で見てあげることがやるべきことかなと思っていて。
もち:なるほど。
後藤:それが、健全に衝突していくみたいなことがすごく大事かなと思います。
もち:いや、そこが難しいですよね。生徒さんとかを見てても結構よく聞く話なんですけど、例えばクライアントから「こういう文言で行きたい」みたいなアイデアをもらって、それを例えばバナーにしますという仕事があったとして、「いや、でもこの文言だとちょっとユーザーにとっては危機感煽りすぎてないか、あんま受け入れられない、手にとってもらえないんじゃない」みたいに、ユーザー目線に立つのはやっぱデザイナー得意なんで思ったとして。
「ユーザー目線で見るとちょっとこの言葉強すぎるんじゃないかなと思うんで、こういう感じにしませんか」と提案する。でも、結構それが通らないことが多くて。「いや、自分はこの文言に思い入れがあるからこうしていきたいんです」って通されちゃう。あんまり衝突にもならない、一応提案はするんだけど、衝突する前にデザイナーが引いちゃうみたいなのがすごい多いのかなと。特に駆け出しは。そういう時はどうしたらいいんでしょう?
後藤:そこで大事になってくるのが、1つはロジックっていうやつで、さっきのフレームワークに当てはめてみるのもいいんですけど、要は、一般的すぎる言葉が刺さらないみたいなことって事実としてあるんですよね。クライアントが思いつける言葉って、大体その一般的な言葉なんですよ。
もち:ほう。
後藤:これちょっと言いすぎなとこもあるけど、大体において。そうなってくると、クリエイティブの力を半減させたり、その言葉によって刺さらなくなってしまったりすることが起こり得るので、自分はそのデザインをやっている、表現のプロとしての視点で、「それはちょっと弱くなっちゃいますよ、なぜならこうです」っていうのを出してあげる必要性があるかなと。
もち:なるほど。
後藤:そこでも結構ロジックやフレームワークみたいなものを使えるし。あと、「いや、自分はこう思うんでこれでいい」みたいなことを言われている時点で、それって多分求められている役割がオペレーターなので、そもそもオペレーター。
もち:ガーン。
後藤:本当にプロとしてその場に立っていたとしたら、「自分はこう思うんですけど、どう思いますか?」って聞かれると思うんですよ。「それはプロとしてはちょっとこうだと思いますよ」というような、それが健全的な話なんですけど。
この距離感の話でもう1つ大事なことがあって、同一化してしまうと結局生まれるのは上下関係なんですよ。だって、相手が上じゃないですか、どう考えても。同一化してるから。相手が今何考えてるのかなって伺わなきゃいけないわけだから、相手が上なんですよね。
もち:はい。
後藤:それって相手にも伝わっちゃうんですよ。「いや、自分がこう言ってるんだから追従で行くよ」みたいになっちゃう。部下に対する「責任者は自分なんだから」っていうのと同じ。
もち:確か、確かに。
後藤:この時点でやっぱりちょっと関係構築に若干失敗してるんですよね。
もち:厳しいけど、そうなのかも、と今入りました。
後藤:本当は対等にあるべきで、クライアントはクライアントである1つの分野における専門家なんだとしたら、自分は自分でデザインの専門家として立つべきであって、「いや、そんな感じでやってはいけませんよ」みたいなことが健全に対話できる関係性をどう作るのかっていうのは、非常に重要だと思うんですね。
なんか「絆奏(伴走)」って、結局「死主死体(指示主体)に対して自分が従っていきますみたいな感じ」になっちゃうので、ちょっと危険な言葉だと僕は思ってます。
もち:もう、あるあるすぎてやばいですよね。むしろそれがスタンダードみたいな。「あなたの思いをデザインで形にします」っていうあのジュニアが使いがちなキャッチコピー。
後藤:僕も「伴走」って使うこともありますけど、自分でも「伴走」って使う時は本当に共に走るという意味で使いたい。
もち:戦友みたいな感じですよね、イメージが。
後藤:ちょっと厳しいこと言うと、多くの人が言っている「伴走」って「追随」なんですよ。「ついていく」って。ああ、それだとやっぱり議論ができなくなっちゃいますね。
もち:なるほど。今、半分ぐらいのデザイナーたちが言葉が刺さりすぎて倒れたような気もしますけど(笑)。ちなみに後藤さんは、戦友的な伴走をしていって、健全な衝突も恐れずに起こしていった場合、関係が壊れたことってないんですか?
後藤:関係が壊れることはないですね。というか、求められることの方が実は多いで。
もち:へえ。
後藤:自分は専門家として発言をしているんだということを、結構ちゃんと意識してるかどうかで変わってくると思うんですよ。「この人は言うことを聞いてくれるタイプじゃなくて、いろんな意見を出してくれる人なんだ」という認知が起こったら、そういう関係になっていくし。「この人なんか言われてることをやってくれるだけだな」となったら、いつまでもそっちの関係。
なんかそこは結構いろんなところで示してますね。提案もそうですし。さっきの第1章の時にもお伝えした「さすがですね」って言われるっていうことが、僕のゴールなので。「思い描いてきたやつをそのまま形にしてきました」っていうことでは、「さすがですね」ってあんま言われないと思うんで、自然とそういう立ち位置になっていく。
「さすがですね」と言われることが重なっていくと、クライアントも楽しみになってくるんですよね、こっちの提案が。「今回どんなんが出てくるんだろう」「この打ち合わせ自体がちょっと楽しくなってくる、ワクワクしてくる」。
そういう場作りとか関係作りも1つのクリエイティブなので、それに向き合うことはすごく大事なんじゃないかなと思います。
【判断軸3】ブランドを背負う覚悟|経営者の孤独

もち:では第3章、「ブランドを背負う覚悟、それは資産を預かるということ」。デザインは消費されるものではなく蓄積されるものですと。デザイナーって、こうやって自分がかっこいいものとか綺麗なもの、可愛いものを作れるみたいなところにアイデンティティを置いてる人も多いので、自分が新しくジョインしてきたら「もっとかっこよくしなきゃ」「もっといいデザインにしなきゃ」みたいなところに囚われちゃう、過去をないがしろにしてしまうみたいなこともあるのかもしれないなあと。
後藤:そうですね。そういうことも大事な局面もちろんあるんですけど、やっぱり意識しなければいけないのは、例えば事業をやられている方とか経営者の方とかって、絶対に売上について聞くじゃないですか。「このデザインやったらどれぐらい売上上がるんですか?」みたいなことは本当は聞きたいわけですよ。
もち:聞きたい。
後藤:それはなんでかと言うと、その人は全部背負ってるからなんですよね、そのブランドを。ブランドを背負うということは、当然売上を上げていくことも含まれているので。というか、多分それがないとそのブランド維持できないんで。
そこはすごく当然のこととして重視するんだけれども、経営者のそういう立場みたいなことを想像できないと、なんかよそからやってきたやつがごちゃごちゃ言ってくるみたいな状態になっちゃう。本当はそうではなくて、お互い幸せにならないんで。
もち:「何言ってんだ、今そんなことやってたら潰れるんだ」みたいなのは、私も経験してます。
後藤:そうですね。デザイナーとしての正論と、事業をやっていくことの正論みたいなことが違うことが大としてあるんですよね。
もち:いや、もうしょっちゅうぶつかりますよね。
後藤:でも本当に大切なのは、そのブランドにとって本当にいいデザインって何なんだろうみたいな視点なはずなんですよ。そのためにはブランドのことを理解しなきゃいけないし、思いを汲まなきゃいけないし、その上でデザイン提案をしていくっていう風にしていかないと絶対刺さらない。
だからこそ、1個1個の要素に対して説明できる状態にしておくっていうのは、デザイナーの説明責任なんだけれども、それは経営者とか事業責任者、ブランドを背負ってる人たちに対しての責任でもあるんですよね。「これがこの書体になっているのはこういう理由です。これはこういう印象を与えるからです」みたいなのを、逐一説明できないとやっぱり信頼されていかない。
別にしなくてもいい、聞かれない限りは。でも聞かれた時にちゃんと答えられる状態を作っておくってことはすごく重要だと思います。
もち:いや、本当に経営者とデザイナーの溝は結構深いですからね。
後藤:深いですね。でもこれ結局そりゃそうなんですよ。デザインが受けなかったとしても責任取ってくれるわけじゃないから。
もち:はい、極論そうですよね。売れなかったとしても責任取ってくれるわけじゃない。
後藤:気持ちとしてはやっぱり、そのブランドを一緒に背負ってくれるっていうことがすごく向こうにとっては大事なことだったりするし、その意識は非常に僕は重要だなと思います。
もち:本当に私も自分で経営をやってみて、今3年目になりましたけど、経営者としての私とデザイナーとしての私がいつも喧嘩するわけですよ、頭の中で。
後藤:はい。
もち:売上のことを考えると、そこに投資してる余裕はないみたいな経営者目線と、「いや、でもやっぱカッコいい色作りたいじゃん」って言ってるデザイナーな私がいるんですけど。
そういう経験を3年間やってきて、経営者としての私がデザイナーにすごい求める視点としては、なんかやっぱり柔軟性を持って欲しいって、めっちゃ思います。余裕がある時はもちろんデザインに投資してこだわりたいし、余裕がなかったらある程度妥協して、「ここまではやりましょう」みたいな妥協点を見つけてもらう。「スピードとコストを優先させましょう」みたいな判断をしてくれるとありがたいんですけど、大体皆さんやっぱ美学が強いので、「デザイナー、ここは譲れねえ、こだわるとこなんだ、こっちはプロだからな」みたいな方がどっちかというと多い。ぐぬぬとなることがあります。
後藤:その立ち位置がすごく難しいと思ってるんですけど、やっぱり一緒に背負うことは大事だし、かと言って同一化しすぎないことも大事だし。どっちみち一緒に背負いきれないわけだから、デザイナーは、前提として。
もち:はい。
後藤:でも、だからこそできる立ち位置みたいなこともあるはずだと僕は思うんですよね。いろんな手段を持っておくべきだと思っていて。例えばちょっと矛盾するようなことを言うと、「無責任」っていうフェーズもあってもいいかもしれないと思うんですよ。最初の初期段階はもうとにかく無責任なことを言って、ちょっとクライアントの凝り固まった頭をほぐしてあげようみたいなこと。それを意図的にやることが大事ですよね。
距離感の話も、相手を正しく知ってないと距離って測れないじゃないですか。ちょっと遠いかもしれないなとか、ちょっと近すぎるかもなとか、相手のことを知らないとわかんないわけだから、相手をどこまで理解できるのかっていうところは本当にちゃんと捉えておかないといけない。その上でどういう責任を一緒に背負うのかを考えていかなければいけないかなと思います。
もち:難しい立場ですね、ブランドデザイナーって。使い分けなきゃいけないみたいな、このポジションを。
後藤:それを1つの楽しみとして作って欲しいなと思って。そういう関係性をどう作るのかも1つのクリエイティブな行動なので、関係性を作るとかそういうことに対してもデザイン力を発揮してほしいなと僕は思ったりしますね。
「重圧を誇りに変える」経営者と対等に立つ覚悟|判断軸3の深掘り
もち:「重圧を誇りに変える」、これはどういう経緯を経て後藤さんはここにたどり着いたんでしょうか?
後藤:僕の場合はブランドを扱うデザイナーになって、経営者の方とご一緒させていただくことが多くなってから、この辺りは明確に変わった部分かなと。やっぱり知れば知るほど経営者ってすごい孤独なんですよ。
もち:孤独です。なんか分かってくれる人いないですもんね、全然。
後藤:みんな好き勝手言ってくるけど、責任とるの自分じゃんみたいな感じだったり。経営者として孤独すぎてつまらなくなるし、そうならざるを得ないような感じなんですよね。やめるわけにもいかないし。
もち:弱音吐けないですしね。
後藤:吐けないですしね。もう前に進むしか道がないんだけど、前に進んだら苦しいわけですよ、当たり前だけど。
そういう人たちに対してデザイン提案をしていくとなった時に、こっちもちゃんとデザイナーとしてベストなものを出していかないと、もう全然釣り合わないなって思ったんですね。「ちょっといいデザイン出してみました」みたいなことで濁されるみたいなことってすごく嫌だなと思って。
そうではなくて、本来デザイナーがやるべきこと、デザイナーの責任って、「こうやったらこのブランドがより輝くよね」とか、より分かりやすくなった、鮮明化された、そういう状態に持っていくことだと思うので。そこに対して責任を負えないと、何も発言できないと思ったんですよ、経営者に対して。
経営者に対するどういうアンサーを持っていくのかの繰り返しによって、僕は責任とか覚悟みたいなものがだんだん身についてきたなと思います。
もち:なるほど。コミュニケーションを繰り返していくうちに、経営者という生き物に対する解像度が上がって、自分も同じぐらいの覚悟を持って対峙しないといけないんだなと。
後藤:そう。自分はデザインの責任者として今ここに立っていて、その立場でちゃんと発言しなければいけないなと。「僕はブランドの責任者として、これをやったらちょっとこのブランド毀損しちゃいますよ」とかっていうのは全然あるし、そこは1つの覚悟の作り方なのかなと。
もち:はい。
後藤:別に経営者とデザインって、衣装悪いわけではないから、お互いの武器を使ったらより良いものが作れるっていうことにお互いが気づくっていうことはすごく大事だと思ってるので、そういうコミュニケーションをするってことはすごく大事だと思います。
「商業美術」を取り戻す|マーケティング学習のすすめ
もち:ちょっと深夜デザイナーとかになって経験積んできた人が、何かを提案したり経営者と話をする時に、結構デザイナーっていい人多いなと思って。正義感が強いとか優しさみたいなのがすごく誰も置いていかないみたいな考え方の人がすごく多いなと思っていて、それはそれですごくいいことだと思ってるんですけど、ユーザー目線に寄りすぎちゃって、事業のビジネス的な観点が抜け落ちちゃうってよくあるなと思って。
そこのバランス感ってどうやって取っていけばいいんですかね?
後藤:そのビジネスとのバランス感覚って、本当にそのブランドを世の中に出して、知ってもらって購入していただくっていうプロセスをどう作るのかってことだと思うんですよね。そこに対してデザイナーがやれることってたくさんあるんだけど、1本も2本も引いてしまうケースがすごく多いなと思っていて。
一言で言ってしまうと、マーケティングを学べばいいんじゃないかと思ってるんですけど。
もち:なるほど。
後藤:学び続けることが大事だと思うんですね。その学びがビジュアルデザインだけにとまっていると、結局できることって少ないんですよ。僕が大事にしてほしい発想は、自分の手数を増やしていく、要は範囲を広げていく。広がった分だけ可能性が増えていくので。
マーケティングっていうのは、基本的にビジネスをどう成長させるのかっていうことの道筋を作ることなので、ビジネスやる上ではほぼ必修科目みたいなもんなんですよね。
そもそもデザインって日本語では「商業美術」と言うことが多いんですけど、商業美術の「商業」がついているのに、商業のことを全く知らないデザイナーが多いんですよ。商業と美術で、美術の方に寄りすぎちゃっていて、商業も同じぐらい大事なんだけどねみたいなことが、ちょっと抜け落ちているのが、そもそもの話だと思っていて。
もち:なるほど。
後藤:バランス感覚を学ぶためには、ちゃんとビジネスの構造を学んでマーケティングを知ってみるとか、そういうことがまず大事なんだろうなと。第1歩としては。
マーケティングって、1から1000まであるんで、「何学べばいいねん」みたいな話なんですけど。
もち:本当に未だにわかんないっす、勉強頑張ってるはずなのに。
後藤:今、手法としては2000を超えるらしいので。
もち:やばいですね。
後藤:そんなん全部は勉強できないんですよ。だからこそ基本を知ることがすごく大事だと思っていて。デザイナーでマーケ学びたいっていう人には、戦略と戦術みたいなものがあるとして、データを計測していって「これが当たった、これが当たってない」みたいなことを調べるのが戦術のマーケティングだと思うんですね。デジタルマーケティングとか。
僕はそっちよりも、これは僕がブランドのデザイナーだからですけど、戦略の方が大事だと思っていて。要は、そこに至るまでにどういう設計図を書くのかみたいなことを理解する方が大事だと。
僕は大体マーケティングは最初にまず3C分析と、STPっていうセグメンテーション、ターゲティング、ポジショニングの頭文字を取ったやつ、この2つを徹底的に身につければ大体のことは足りると思ってます。逆に、これができてないと戦略が当たらないですね、到達できなくなっちゃう。
僕はデザイナーの身につけるべきは多分この辺りだと思っていて、それができていてその考え方が身につきさえすれば、自然とビジネス的な発想でデザインを作るってことは別にそんなに難しくないと思ってます。
もち:いや、勉強になります。確かにマーケティング勉強するのが1番いいですね。
後藤:早いと思いますね、僕は。自分で売ってみるのもすごく大事。気持ちが分かるんで。その時に「デザイナーだから」という言い訳をしないってことはそうしてたと思います。
もち:デザイナーだからを言い訳にしない。
後藤:「デザイナーだからあんまり今回売れなかったんだよな」「経営者とかビジネスマンじゃないからさ」「大事なのは売上じゃないんだ」とか言って逃げない。いかにデザインっていうなんかビジュアルだけで売っていこうとした時にどれだけ力が通じないかみたいなことを知った方がいいと思います。
もち:いや、本当に売れないですからね。私も何回か痛感してますけど、見た目がいいだけじゃマジで売れないですね。っていうか、まず認知されないっていう。存在をどうやって認知させるのかなとか、すごく大事だし。それをやってこうとすると、どうしても言葉の力が必要だったり、そういうことにも気づき始める。
後藤:もちろんデジタルマーケティングみたいなことも必要にはなってくると思いますけど、その辺りは他の専門家と組んでみてもいいかもしれないけど、依存性を「自分1人だとこんなもんだな、だからこういう人たちが必要なんだよね」って気づけれるだけでも、すごく大きい。
刺さる言葉どれなのかな、刺さるキーワードがどれなのかなとか、その辺のことってもう1個決めて決めたら終わりっていうことではなくて、出してみて反応があってで変えてみたりとか、その繰り返しがブランディングなんですけど。そういう改善作業みたいなことも含めて、やっぱりクライアントに寄り添うべきだと僕は思うんですよね。
「何かを受注して何かを作って納品しました、で終わり」っていうのが従来型のデザイナーのやり方だと思っていて、これはもっとアップデートして、そっから先が大事なんだよねと、そっから先もどんどんデザイン回していきますよっていうことの方が僕は重要だと思うんで、そこで終わらない意識ですね。
もち:ブランドって永遠に続くので。
後藤:終わらない限りは、永遠の改善活動なんですよ。時代に応じても変わっていかなきゃいけないし、お客変われば全て変わっていくし、それをポジティブにどう楽しむのかっていうことでもあるので、そこをデザイナーが助けてあげることによって意義がある。
後藤さんから駆け出しデザイナーへのメッセージ

もち:では改めて、ジュニアの皆さんに一言、お伝えお願いします。
後藤:今日はすごく難しい話もたくさんしてしまったかなと思うんですけど、それぐらい世の中難しいんですよね。売れるためにはすごく難しくて、ビジュアルを極めればなんか売れていって全て解決するかというと、別にそんなこともなく。
多くの人はたくさんいろんな自分なりの武器を持たなきゃいけなくて、そのためには学び続けなきゃいけないし、チャレンジし続けなきゃいけない、というのをとにかく自分で癖付けるってことはすごく大事だと思ってます。
例えば、春のイベントのフライヤーを作るって時に、「春といえばピンクだな」みたいなことからちょっと脱却しようと思って、黄色を使うっていうのを決めて、黄色で表現したみたいなことを結構やるんですよ、僕。それは1つのチャレンジで、簡単なチャレンジではあるんですけど、そういうのを自分の中で癖づける。提案の中に最近読んだ本のフレームワークを1個突っ込んでみる、よくやりますけど。そういうことを自分でやっていくことによって、徐々にやれることが広がっていったり、視点がちょっとずつ上がっていったりして、そういう風に成長していくものなので。
とにかく自分がやってることをマンネリ化させないというのがすごく大事なことなのかなと僕は思います。
あとは、クライアントと同じブランドを背負うっていうことに対しては、すごく覚悟がいることなんで、その覚悟がないままデザインを進めるのはあんまり良くないなって思ってます。覚悟と言っても責任は取れないっていうところはすごくあるんですけど、その責任を負うぐらいの覚悟を持って挑んでいかないと、向こうも必死にやってることなので、ビジネスというのは。そこに追いつかないんですよね。
そこに対する意識1つでやるべきことも変わってくるし、行動も変わってくるはずなので、とにかく制作だけにこう自分をとめるんじゃなくて、本当の意味でクリエイティブをやってほしい、いろんな分野で。
それができるようになってくると、「あ、これもデザインでできるな」「これもデザインでできるな」って気づき始めるので、自分のやれることってめちゃめちゃ広がってきます。それがすごく自分の武器になるので、ぜひそういう感じで「自分をデザインする」っていうことですね、ぜひやってみてください。
もち:ありがとうございます。ぜひ自分をデザインするって挑戦してみてほしいです。私も頑張ります。
改めて振り返ると、「相手の想像を超える」「1番近い他人でいる」「ブランドを背負う覚悟を持つ」の3つでした。どれもスキルの話というよりは、意識とか向き合い方とか姿勢の話だったなという風に思います。なので、駆け出しの方でも今日から自分をデザインするっていう部分でもそうですけれども、ちょっとマインドを変えられる部分があるんじゃないかなと思います。
後藤さん、本日は本当に詳しく色々教えてくださってありがとうございました。NOT MAGAZINE TALK、第1回目のゲストとして登場いただいて、駆け出しデザイナーから中堅シニアまで、誰が読んでも刺さる内容になったと思います。またぜひ別のテーマでもお話できたら嬉しいです。
後藤:こちらこそ、楽しい時間でした。ありがとうございました。
校長の見解|対談を終えて、AI時代こそ「自分をデザインする」が武器になる
対談はここで一区切り。ここからは、NOT DESIGN SCHOOL校長・もちが対談を終えて感じたこと、後藤さんとのラリーで気づいたこと、自分の経営者経験を踏まえて解釈したことを、独白形式でまとめます。
特に、後藤さんが語った3つの判断軸をAI時代の文脈にどう接続するか、そして駆け出しデザイナーがどこから手をつければいいかを4つの視点で整理しました。
視点1|AI時代こそ「オペレーター化」の罠が深まる
後藤さんとの対談で改めて感じたのは、「3つの判断軸はAI時代こそ価値が上がる」ということです。
2026年現在、AI(Claude Code・Figma Make・GPT Image 2.0など)の登場で、デザインの「手を動かす部分」はかなりの割合が肩代わりされる時代になりました。バナー1枚、LPのワイヤーフレーム、ロゴのラフ案、これらはAIである程度作れてしまいます。
そのとき問題になるのは、「手を動かすだけのデザイナー」の価値が急速に下がることです。
NOT DESIGN SCHOOLが掲げる「AI時代の上流デザイナー育成」というコンセプトの根本にあるのは、まさにこの危機感です。AIに代替されるのはオペレーター仕事であり、「考えるデザイナー」「期待を超えるデザイナー」「ブランドを背負うデザイナー」はむしろ価値が上がります。後藤さんの3つの判断軸は、AI時代こそより重要度が上がるマインドセットだと感じました。
視点2|駆け出しでも「スタンス」だけは今日から変えられる
「期待を超える」「1番近い他人でいる」「ブランドを背負う」、これらは20年デザイナーの境地で、駆け出しがいきなり全部やるのは無理です。スキルが追いつかないから。
ただ、「スタンス」だけは今日から変えられます。
修正指示を受け取ったら、本質的な「なぜ」を1回考えてみる
クライアントの要望を直訳せず、メタ的な視点で1回考えてみる
自分の提案にフレームワークを使ってロジックを少しだけ添えてみる
追随者ではなく、プロの伴走者として振る舞う
これだけでも「オペレーター化」の入り口に立たないで済みます。スキルとスタンスは別軸で鍛えられるものなので、駆け出しはまずスタンスから変えるのが現実的です。
視点3|経営3年やって痛感した「柔軟性」の大切さ
対談中、私も思わず「経営者の孤独わかります、しょっちゅう経営者とデザイナーが頭の中で喧嘩する」と話してしまいましたが、これは経営してみて初めてわかったことです。
経営者は売上の責任を全部背負っています。デザインに投資したい気持ちはあっても、キャッシュフロー的に厳しい時期もあります。そういう時にデザイナーから「ここはこだわるべきです」「美学として譲れません」と言われると、正直「今そんなこと言ってる場合じゃないんだよ」と思ってしまうことがあります。
経営者としてデザイナーに求めるのは、柔軟性です。余裕がある時はとことんこだわってほしい。余裕がない時は、スピードとコスト優先の判断を一緒にしてほしい。これができるデザイナーは「事業パートナー」として絶対手放したくない存在になります。
視点4|「自分をデザインする」発想|肩書きから戦略的に考える
対談の終盤で後藤さんが言っていた「自分をデザインする」という発想は、私自身も今まさに実践中です。
実は最近、私は「デザイナー」と名乗ることをやめようか迷っています。NOT DESIGN SCHOOLを運営しながら、教育・ライティング・経営判断・AI活用研究など、「デザイナー」の枠を超えた仕事が増えているからです。
ただ、ぴったりくる肩書きがまだ見つかっていません。「アートディレクター」でもない、「クリエイティブディレクター」でもない。「事業パートナー」「ブランドアドバイザー」あたりが近いかもしれませんが、まだしっくりこない。
肩書きやポジショニングを戦略的に考えるのも、デザイナーがやるべき自己マーケティングです。これを意識するだけでも、自分の市場価値が変わります。
オペレーターから脱却するとは、「デザイナー」というラベル自体を一度疑ってみることから始まるのかもしれません。
FAQ|よく聞かれる質問
Q1. 駆け出しでも今日からできる「オペレーター脱却」の第一歩は?
A. 自分の提案したデザインを自虐するのをやめてみましょう。駆け出しがつい防御のためにやってしまいがちな「自虐」。例えば「安易に入れてしまったんですけど…」「もしかしたら要らないかもしれないんですが…」など、自分の提案デザインを説明する時に、自虐的な枕詞を付けていませんか?これは単純にクライアントからは頼りなく映りますし、デザインのプロとしての信頼が醸成されません。スキルがなくても、自虐はやめましょう。これは今日からできます。これだけでも「言われた通りに作るだけのオペレーター」から一歩抜け出せます。
Q2. クライアントに反論したら関係が壊れそうで怖いです
A. 信頼関係の土台がない状態で反論すると確かに壊れます。まずは「約束を守る」「小さな提案で信頼を積み上げる」を優先してください。1〜3案件で信頼ができてから、ロジックで武装した「健全な衝突」に進むのが現実的な順番です。後藤氏も「さすがと言われ続ける状態を先に作る」ことで、自然と健全な衝突ができる関係になると語っていました。
Q3. マーケティングを勉強したいですが何から始めればいいですか?
A. 後藤氏が推すのは3C分析とSTPの2つです。マーケティング手法は2000以上ありますが、この2つを徹底的に身につければ大体のことは足ります。書籍やオンライン記事でまず基本を学んで、実案件で使ってみるのが一番早いです。NOT DESIGN SCHOOLでも、デザインの隣接領域(マーケティング・実装・AI活用)を学べる環境を用意しています。
Q4. 「自分はオペレーター化していないか」を見抜く簡単な方法は?
A. 以下のチェックリストを試してみてください。3つ以上当てはまったらオペレーター化の兆候があります。
修正指示の「なぜ」を聞かずに反映している
クライアントの言葉を直訳して提案している
自分のデザインを1個1個説明できない
提案が通らなかったらそれ以上踏み込まない
競合・市場・業界の情報を自分から仕入れていない
納品後の改善には関わらない
Q5. AI時代にデザイナーが生き残るために何を磨けばいいですか?
A. 「考える側」のスキルを磨くことです。具体的には、ロジックを組み立てる力、マーケティング思考(3C・STP)、クライアントの「本当の願い」を引き出すヒアリング力、ブランドを背負う覚悟と説明責任、隣接領域(実装・AI活用・コピーライティング)の手数です。
ビジュアルだけのデザイナーはAIに代替されやすくなりますが、「考えるデザイナー」はむしろ価値が上がります。NOT DESIGN SCHOOLでは、AI時代の上流デザイナー育成に特化したカリキュラムを用意しています。
Q6. 後藤さんのような提案力を身につけるのに何年かかりますか?
A. 後藤氏自身は「採用率の違いに気づくのに4〜5年かかった」と語っています。ただ、これは独学の場合の話で、メンターがいる環境や、提案力を体系的に学べる場があれば、もっと短縮できる可能性があります。
関連リンク・参考資料
NOT MAGAZINE TALK 動画シリーズ
対談元のnote記事
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