NOT DESIGN SCHOOL(ノットデザインスクール)

AI時代に選ばれるデザイナーは「提案書」で決まる|根拠の作り方

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2026/09/07

📌 この記事のポイント

  • AIが作れるのは形。作れないのは形を選んだ理由

  • 提案が落ちる原因の多くは品質でなく伝達にある

  • 2026年に提案力を伸ばすと答えた人は29.1%

  • 根拠はブランディング・心理効果・使いやすさの3観点で作る

  • 要件のヒアリングだけはAIに置き換えられない

2026年9月6日更新

AI時代に評価が集まるのは「その形を選んだ理由」を説明できる人

デザインの報酬は、形を作る作業から「なぜこの形なのか」を説明する部分へ移りつつあります。生成AIがビジュアルの案出しから実装のたたき台までこなすようになった結果、成果物そのものは短時間で複数案そろうようになりました。それでも提案が通るかどうかは、案の数ではなく根拠の強さで決まります。

株式会社日本デザインが2026年1月14日に公表したフリーランス・副業WEBデザイナー110名への調査では、2026年に最も注力したいこととして「提案力・企画力を高める」を挙げた人が29.1%で最多でした(調査期間2026年1月5日から6日)。作る力ではなく、通す力に関心が移っている状況が数字にも出ています。

参考動画:【デザインは伝え方が9割】絶対にクライアントに伝わる提案書の型【前編】【後編】(NOT DESIGN SCHOOL、2026年9月1日公開)

提案が落ちる原因は、デザインの品質ではなく伝達にある

提案が通らないケースの多くは、デザインの出来ではなく「意味が相手に届いていない」状態で起きています。NOT DESIGN SCHOOLのウェビナーでは、伝わらない提案書に共通する特徴が3つ挙げられていました。

症状

実際に起きている問題

相手の受け取り方

文字ばかりで読みにくい

情報の整理と視覚的な配慮の不足

どこが重要か分からない

感覚的な見た目で根拠がない

説明の設計が欠けている

個人の感想に聞こえる

目的や課題が反映されていない

作り手視点への偏り

なんとなく違う、と感じる

3つ目が一番やっかいです。「なんか違うんだよな」と言われる案件は、色や構図の問題ではなく、要件がすり合っていないまま手を動かし始めていることが原因になっている場合が多くあります。ここがずれていると、作り直しの範囲が全体に及びます。

もちがスクールで提案書の添削をしていて感じるのは、落ちた提案ほど1枚目からビジュアルが出てくることです。作った本人は自信作を早く見せたいのですが、受け取る側にとっては判断材料がないまま好き嫌いを聞かれている状態になります。

数字で見る、2026年のデザイナーが置かれた状況

AIの普及がデザイナーの仕事を減らしているという見方は、現時点の調査数字とは一致していません。前掲の日本デザイン110名調査では、次の結果が出ています。

調査項目

結果

2025年の案件受託量

大幅に増えた21.8%+やや増えた52.7%(合計74.5%)

2025年の案件単価

上がった62.7%

AI活用による変化

修正回数が減った63.2%

2026年に最も注力したいこと

提案力・企画力を高める29.1%(最多)

出典:株式会社日本デザイン「WEBデザイナー110名に聞いた、2026年のAI活用・単価動向の展望」(2026年1月14日)

注目したいのは「修正回数が減った」が63.2%という点です。AIで手戻りが減るということは、制作時間で差がつきにくくなるということでもあります。時間で差がつかないなら、差がつくのは提案の中身です。

AIに任せられる工程と、人が握る工程

提案書づくりの工程を分けると、AIが強いのは情報の整理と表現の量産、人が握るのは前提の決定と責任の引き受けにきれいに分かれます。

工程

AIの得意度

理由

業界動向や競合のリスト化

高い

公開情報の収集と要約が速い

文章の言い換え・推敲

高い

語彙の候補を大量に出せる

図解やグラフの案出し

中くらい

たたき台は出るが選定は人

要件のヒアリング

低い

相手が言語化できていない前提を掘れない

課題の優先順位づけ

低い

予算・社内政治・納期の重みを判断できない

提案内容の責任

置き換え不可

契約と信頼の主体は人

リサーチの下ごしらえと言い回しの推敲にはAIを使い、課題の設定とコンセプトの決定は自分でやるという線引きにしています。ここを逆にすると、きれいな日本語で書かれた中身のない提案書ができあがります。

この線引きを実際の時間配分に落とすと、次のように変わります。

工程

AIを使う前

AIを使った後

リサーチと情報整理

全体の4割

全体の2割

資料の作成作業

全体の4割

全体の3割

要件のヒアリングと課題設定

全体の1割

全体の3割

説明の準備(言い回し・想定質問)

全体の1割

全体の2割

削れた時間を作業に戻すのではなく、ヒアリングと説明の準備に振り替えるのが、提案の通過率に効く使い方だと考えています。

提案書づくりでAIを使っていい場所・使ってはいけない場所

AIの使いどころとは、事実確認が効く範囲かどうかで線を引くのが実務的です。裏取りできる作業は任せて、裏取りできない判断は自分で持ちます。

使っていい場所

  1. 競合サイトの表現傾向を一覧に整理する(最後に自分の目で確認する)

  2. 感覚的な言葉を、根拠を含んだ言い回しに書き換える候補を出す

  3. ヒアリングで聞き漏らしがないか、質問項目の抜けを点検する

  4. スケジュールの粒度をそろえる、表記ゆれを直す

使ってはいけない場所

  1. 出典を確認していない統計や事例を、根拠として提案書に載せる

  2. クライアントの課題そのものをAIに考えさせる

  3. 心理効果の名前だけを後付けで貼りつけて説明にする

3つ目は提案の場で崩れやすい部分です。名前を出したうえで「なぜこの案件に効くのか」を自分の言葉で続けられないと、聞き手には借り物の説明として伝わります。言語化そのものの鍛え方はAI時代に残るデザイナーの条件は「言語化」に書きました。

指示の出し方でいうと、成果物ごと任せる書き方より、判断は自分で持ったうえで候補を出させる書き方のほうが使えるものが返ってきます。

【使える指示の例】
以下は私が作った提案書の説明文です。
「余白を広めに取り、落ち着いた印象にしました」
この文を、次の3つの観点それぞれから根拠を足した言い方に書き換えてください。
・ブランディング(目的・世界観・一貫性)
・心理効果(人の反応の傾向)
・使いやすさ(迷わず使えるか)
案件は歯科医院のサイトリニューアル、ターゲットは30代から40代の子育て世代です。
候補を3案ずつ出してください。事実として不確かな統計は入れないでください。

指示のなかに案件の前提を入れておくのがポイントです。前提が空のまま書かせると、どの案件にも使える一般論が返ってきます。

根拠は「ブランディング・心理効果・使いやすさ」の3観点で作る

デザインの根拠とは、第三者が検証できる基準に自分の判断を接続したものです。ウェビナーでは、説得力を作る観点として次の3つが示されていました。

観点

説明の軸

使える物差しの例

ブランディング

目的・世界観・一貫性

ターゲット定義、トーン&マナー

心理効果

印象がどう作られるか

コントラスト効果、ヒックの法則

使いやすさとアクセシビリティ

迷わず使えるか

WCAGのコントラスト比、ニールセンの10原則

物差しを持ち出せると、話が好みの領域から仕様の領域へ移ります。たとえばテキストと背景の色の組み合わせは、W3Cのアクセシビリティ基準WCAG 2.2で通常サイズの文字に最低4.5対1のコントラスト比が求められています(W3C WCAG 2.2 達成基準1.4.3)。「読みやすいと思います」ではなく「基準を満たしています」と言えると、反論の余地が減ります。

使いやすさの評価軸としては、Nielsen Norman Groupが公開しているユーザビリティの10原則(1994年公開、2020年更新)が使えます。心理効果の引き出しを増やすなら、『サクッと学べるデザイン心理法則108』(321web著、翔泳社、2023年2月6日発売)のような一冊を手元に置いておくと、提案の場で名前が出てきます。

観点ごとの具体的な言い換えはデザイン提案の説明術|感覚の言葉を根拠に変える言い換え20例にまとめました。

要件のヒアリングだけは、AIに置き換えられない

要件定義とは、プロジェクトのゴールと前提条件を相手と一致させる作業です。ここが提案書の土台になり、同時にAIが最も苦手とする部分になります。理由は単純で、クライアント自身が課題を言語化できていないことが多いからです。

ウェビナーで紹介されていたヒアリングシートの項目は次の通りです。着手前にこれを埋めておくと、後工程の作り直しが減ります。

  1. プロジェクトの概要:制作の目的は売上なのか、認知なのか、採用応募なのか

  2. ターゲット:性別、年齢、職業、居住地、興味関心

  3. メッセージ:一番伝えたいことは何か

  4. デザインの方向性:希望するトーンや参考事例はあるか

  5. ビジュアル素材:使える写真、イラスト、ロゴ、データはあるか

  6. 予算と納期

聞き取った内容の整理はAIに任せられます。その場で相手の表情を見ながら、言葉になっていない不満を掘り下げる部分は人の仕事です。もちが見ていると、ここを飛ばした案件ほど後半で揉めています。

限界と注意点

AIの出力をそのまま根拠にすると、事実確認をしていない提案になります。 生成された統計や事例には、出典が存在しないものが混ざります。提案書に数字を載せるなら、公式サイトやリリースの一次情報まで自分で当たってください。提案の場で出典を聞かれて答えられないと、その1件だけでなく提案全体の信頼が落ちます。

この記事で引用した調査は110名規模で、サンプルは大きくありません。 対象も直近3か月以内に有償案件を受託したフリーランス・副業のWEBデザイナーに限られています。市場全体の傾向として断定できる数字ではなく、方向性を示す参考値として扱うのが妥当です。

根拠づくりは、やりすぎると逆効果になります。 心理効果やガイドラインを並べすぎた提案書は、読み手にとって理屈っぽく見えます。根拠は提案の主要な判断1つにつき1つで足ります。

よくある質問(FAQ)

AIで提案書を作ると、クライアントに気づかれませんか?

文章の推敲や整理にAIを使うこと自体は問題になりにくいです。気づかれるのは、案件固有の情報が入っていないときです。相手の社名や課題が入っていない一般論だけの提案書は、AIの有無に関係なく見抜かれます。

根拠を説明したいのですが、心理効果の知識がありません。

まず3つだけ覚えるところから始めてください。コントラスト効果(目立たせたい要素に反対の色を使う)、ヒックの法則(選択肢が多いと人は選ぶのをやめる)、プラシーボ効果(表示された情報が体験の印象を変える)の3つは、Webサイトの提案で使う場面が多くあります。

小規模な案件でも提案書は必要ですか?

必要です。ただし枚数は変わります。5万円のバナー1本に20枚の提案書は過剰なので、要件・課題・コンセプト・ビジュアルを1枚ずつ、合計4枚から6枚に圧縮します。順番を守ることが目的で、分量を増やすことが目的ではありません。

提案書とデザインカンプ、どちらを先に作るべきですか?

提案書が先です。カンプから作ると、後から根拠を後付けすることになり、説明が「作ったものの正当化」になります。

AIに仕事を奪われるのが不安です。何から手をつければいいですか?

ヒアリングの質問リストを作るところからをすすめます。上で挙げた6項目を自分の案件用に書き直し、次の打ち合わせで実際に使ってみてください。相手の答えに詰まる質問が見つかったら、そこが提案で埋めるべき部分です。

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